生活設計いろいろ

yousight

教材室

育児休業も残り半年。教材を作っています。
この教材が復帰後に使われるか、お蔵入りになるかは、まだわかりません。
面白い授業になりそうな気がするんですが、教材提示の仕方に悩んでいます。




家庭科には、「ライフコース(生活設計)」についての授業があります。
多くの場合は教科書1ページ程度を使い、

  何歳頃で結婚し、子どもが産まれ、何歳頃に死亡する

なんてのが、平均的データとしてグラフ上に示されています。
教科書により、生まれた時代によって、その年齢や子どもの数が変わるんだなんてことが示されます。

    たとえば、「昔は祖父母も同居していたから子どもへのしつけも手厚かった」なんて思っている人がいますが、
    実は昔は寿命が短く、きょうだい数も多かったので、そもそも祖父母と同居できる子どもは長子ぐらい。
    末っ子が結婚するとき、すでに両親はこの世にない場合も多く、
    「昔は祖父母同居が当たり前」 というのは誤解であろうことが、データを丁寧に見ればわかります。
    ただ、近隣に親族が住んでいたり、地域各家が現代より開放的で、
    大勢の大人&年長児が大勢の子どもを見ていた状況は、あったのでしょうね。



ライフコースはいろんな物事に影響されるし、時に見直しも必要になるけど、
真剣に考えてみよう・・・   という感じで文章がまとめられています。

つまり生活設計とか、将来設計についての授業なんだけど、
どうしても抽象的になってしまう。
高校生にとって「将来」ってのは、せいぜい25歳頃までしか、具体的には見えないと思う。
大人だって、実際のところ、予測可能なのは5〜8年後ぐらいまで?
10年先がはっきり見通すのは難しいですよね。

  だから、「自分の将来設計を考えてみよう」なんて、
  白紙の年表みたいなプリントを配っても、
  生徒はなかなか書けないですよね。



それでつい、この項目の授業はサラッと流したり、いっそ、やらなかったりして。
新人の頃、、将来設計を「人生ゲームを作ろう」って課題にしてやってみたら、
白紙の年表よりは、生徒の取り組みは良かったけども、
真剣には考えにくい。
「わーい楽しい」で終わっちゃうので、成績付けも困る。



でもホントに、将来設計とか、ちょっとでも長期的な視点を持つのは必要なこと。




この授業のテーマ

(1)人生にはいろんなことがあり得て、「普通」「平凡」は決められない、ということに気付く。
(2)一緒に暮らす相手が変わるとき、将来について具体的に考え直す必要が出てくることに気付く。
(3)人生には、大きなお金が必要になる場面が必ずあることを知る。
(4)一緒に暮らす相手(家族構成)と、収入・支出・働きかた・住まいの広さや形態が連動していることに気付く。
(5)すぐにはピンとこないだろうけど、「長い目で人生 (&支出) に備える」ことが切実になる日が、大人になると、きっと来るよ。


導入


<生活設計 として独立した時間をとって授業する場合>

いろんな生き方があって、
そして人生の節目節目にこんなお金がかかるんだよ・・・
ということを、知ってもらいたいと思います。


大学の入学金がいくらかかるか知っている?

  私立だと120万円くらい。これプラス1年目の授業料も支払うので、
  ザックリ言うと、合格発表、即200万円必要になってしまいます。
  専門学校も短大も、私立ならだいたいそのくらいの金額になると考えてください。
  授業料そのものは奨学金でかなりカバーするとしても、
  入学時のこんな大金、
  学生のバイトや奨学金ではまず払えませんから、親が何とかしてあげるしかないでしょうね・・・

  たとえば、大学の入学金が120万円必要だとして、
  それだけのまとまったお金、急に用意は出来ないじゃない?
  でも10年かけて、毎月1万円ずつ積み立てることは出来るかもしれないよ?
  子どもが産まれてすぐに積み立てはじめるなら、毎月5000円くらいですよ。 


人生で大金がかかることを早めに予測して、早めに少しずつ貯金した方が良いことも多いのです。
実際に、何にどれだけお金が要るのか、知っておいて損はありません。

えーと別に、 人生=お金 ってわけではないんだけど、 
お金がかかることは真実だし、そのためにはなんと言っても収入が必要で。
そしたら自分は、どういう大人になればいいのかな?
どれだけ稼げればいいのかな?
そんなことも考えてみてください。


展開

工作用紙で、こんな表を作りました。
表面がツルツルしていますから、付箋などを貼ったりはがしたりしやすいです。

横には10代から70代以降の、年齢を取りました。
縦には順に、
  同居する人   出来事  支出  収入  働きかた  住居
を取りました。



「将来設計」という1回の授業で全部のコマを埋めなくても、

たとえば「生活時間やワークライフバランス」の授業の導入時、
  働きかた & 収入 & 同居する人
のコマを埋めて、
いろんな時期に、働きかたを見直す人もいるってことを示すのも良いでしょう。
同居する人との時間的な兼ね合いや見込める収入も、働きかたを選ぶポイントになるよ、なんて。


また、「住居」の授業で、
生活設計と住居の関係を、もっとクローズアップしてもいいかなと思うんです。
  同居する人 & 住居  
のコマを使って。
色画用紙を人の形に切ります。

青と赤は成人男女。  黄色はその親世代。  ピンクと水色は子世代。



将来設計の中で、「そのとき自分は誰と暮らしているのか」を考えるのは重要だと思うんです。
これによって、働きかたやかかるお金、住まいの広さがずいぶん変わってきますから・・


    あと、家庭科は「自立のための知識や技術を学ぶ」教科なので、
    ついつい、 自分一人で何でも出来るようになる=自立  と誤解されがちです。
    それでは 孤立 に近いかも・・・

実際にはいろんな人と支え合って生活していくのだからね、
出来ないときは人に助けてって言えることも、自立の大事な技術なの・・・
 ってことも、この人形を並べて気付いてくれたらいいなあ。

人形の型紙を作っておき、色画用紙に書いてから切り抜きます。
裏にテープ糊をびーっと付け、
さらに弱粘着の両面テープ(リムカ)を重ねて貼りました。
リムカだけだと、貼ってはがしてまた貼って・・・  の時、
リムカと色画用紙がはがれちゃうのです。


クッキングシートに貼り付けてスタンバイ。
この女性の場合、
   10代の頃は親と同居。
   20代は一人暮らしをし、30歳になるかどうかの頃に結婚し、
   40歳になる頃までに2人の子どもが産まれます。
   50代の頃、一時だけ老親と同居し、
   親を看取るのと前後して、こどもたちが独立していきます。
   70歳になる頃、夫に先立たれ、
   最晩年は娘(娘家族かも)と同居します。


と話しながら、どんどん貼り付けていきたいんです。
こんな人生もあります。

  若いときは一人暮らしし、結婚してから夫婦2人暮らし。
  子どもはなし。

この図だと夫が先になくなっていますが、妻が先に・・・  っってこともあり得ます。
  配偶者に晩年の面倒を見てもらうつもりで結婚を考えても、
  実際、どちらがずっと元気でいるかはわからないのだから、
  結婚に「面倒を見てもらう」という考えを入れるのはリスキーよ、
  ってのは授業でやるには、言い過ぎかも。

また、この図では「働きかた」のコマがまだ空白なので、
いわゆるDINKS夫婦であるかどうかは不明。
こういう人生もあります。
  ずっと親と同居。
  親が亡くなったら一人暮らし。
結婚して子どもが生まれたあと、
  夫とは離別もしくは死別。
  60歳を過ぎ、子どもが独立したあとで再婚。
人生で起きそうなこと・・・?
付箋に書いてスタンバイ。

あと、ツッコミ付箋として、
  「ローンを組むなら定職に就いてないと難しいよ!」なんて
大きなお世話なこと(でも大事なこと) も書いてみました。
働きかたと、得られる収入の付箋。
どんな住宅に住むのか・・・の付箋。
払える家賃の上限も、ここで考えられるんじゃないでしょうか。
賃貸と持ち家(持ちマンション)のメリットやデメリットも挙げると良いかも。
 
  基本的に賃貸住宅の場合は保証人が必要なので、
  親が高齢になったり亡くなると、親を保証人に出来なくなる・・・
  
  持ち家をポンと現金で買うのは普通は無理なので、ローンを組む。
  組みはじめるならそこそこ若い(働ける残り年数が長いうち)うちの方がいいかな?

  子供が増えたら広い家が快適だけど、子どもが巣立ったあとは家を売って、
  コンパクトなマンションや介護付き老人ホームに移る人もいます。

  賃貸なら「引っ越せば解決」するようなことも、持ち家だとそうも行かなくなることがあります。

などなど、これも話せばキリがない・・・

人生の中の大きな支出は、家族構成によってだいぶ変わってきます。

子どものいる人生ならば、当然学費がかかる。
親と暮らす人生ならば、介護の費用が要るかも?
ずっと一人暮らしならば、自分のための生活費はいくら必要なのか知るべきだし、
退職後、自分の老後の収入がどのくらいになるのか(年金?)、予測して損はない。

縁起でもない話だけど、お葬式やお墓にかかるお金と、
車を一台買うお金(幅があるけどな)は、
ほぼ同じらしい。

高校生に、「賃貸住宅を借りるとき、敷金や礼金などで、
だいたい家賃の半年分ぐらいのまとまったお金がないと、契約そのものが出来ないんだよ」というと、
けっこう驚きます。   でも事実なので教えた方がいいと思う。



説明しながら、付箋を貼り付けていきます。

結婚するとき、披露宴をやると200〜300万円かかる。
子どもがいれば、ザックリ言って公立学校なら1ヶ月1万円くらいは予算を見てね(給食、制服、通学費もバカにならない)。
大卒正社員なら、若いときのお給料は月20〜25万円くらいかな。そこから税金など引かれるよ。
アルバイトやパートタイムだと月10〜15万円稼げるかな? 週3〜4日勤務だと10万円いかないかも。


見せ方?

見せ方には悩みます。

これは一応、「師範用」のつもりで作りました。


実物投影機&スクリーンが一番いいかなと。
勤務校に実物投影機があれば、復帰後から使います。
なかったら・・・・  お蔵入りかな?


電子黒板だと、確かに見やすいだろうけど、
人物アイコンや付箋の項目を、
ドラッグ&ドロップできるようなソフトを作らなきゃいけない(どうやって!?)。


普通黒板に模造紙やマグネット付き色画用紙を貼っていくのは、心温まる手法ですが、
ヘトヘトになりそう。そこまでして見せるほどの物ではない、と思います。。


人物アイコンや付箋部分をA4版1枚程度にまとめ、
カラープリンタでシール用紙に印刷して、配布。
4人1班程度のグループ学習にするというのも考えましたが、
こまごまと切り抜くのが面倒だよね。
でも4人1組なら、そのぐらいの作業はOKかなあ。
生活設計のトピックを独立させて、しっかり時間とって考えさせるなら、
この方法も良いと思います。グループごとに見合ったりして、面白そう。

ただし、その方法だと、
「授業単元ごとにライフスタイルを見通した視点を持たせる導入」
としての使い方が、やりにくくなる・・・

どこかでシール教材として作ってくれたらいいのになあ。