布絵本

縫製室目次

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北海道に、「財団法人 ふきのとう文庫」というボランティア団体があります。
ここでは、障害児(特に弱視児・盲児)のために、触って遊べる布絵本や拡大本を作ったり、
病院内に子ども図書館を作るなど、障害や病気のある子どもに、本の楽しみを伝える活動を行っています。

「布絵本」は障害児だけでなく、健常児・・・特にカナエぐらいからの小さな子どもにとっても、楽しめて指先を使う練習にもなる良いものです。
近年、大手メーカーなどでも布絵本を販売しており、やはりそれぞれによくできていて面白いです。
この「ふきのとう文庫」で開発された布絵本の数々は、フェルトでのアップリケを中心とした手作りで、さまざまな仕掛けが含まれています。これを作ってみました。

材料はかなりこまごまと用意しなくてはならないので、「ふきのとう文庫」からの材料キット通信販売を利用しました。
友人からの紹介で、いっしょに注文してもらいましたが、「ふきのとう文庫ホームページ」からでも問い合わせが可能です。

材料キット。
いろんなキットがあるのですが、
「まる」という、全て丸いものをモチーフにしたものを選びました。

フェルト・芯・実物大完成図(型紙として使える)のセットです。
ただし糸は入っていないので、いろんな色が必要ですが、自分で用意しなくてはなりません。私はこれまでに服などを作ったときに使った、ミシン糸の残りを主に使用しました。
基本的には大判(23センチ角)のフェルトに、さまざまなアップリケをして作ります。難しいことはほとんどなくて、単純作業ですが、
裁断が大変。
細かな部品が多く、型紙からフェルトに転写するのが疲れる。

私は邪道なやり方ですが、完成図からアップリケ部分をカッターでくりぬき、アップリケ用フェルトに乗せて、ボールペンで形を転写しました。線がシャープに書けるし、裁断してしまえばあまりボールペンの線は気になりません。くりぬき穴の開いた完成図を土台フェルトに乗せて、縫いつけ位置をボールペンで印します。
ただし、跡が残りやすい色や図案の場合は、「自然に消えるチャコ(サインペンタイプ)」を使いました。

表紙の出来上がり。

アップリケ布を土台布に仮止めするときは、手芸用ボンドを使いました。(少量、布端にかからないように付ける)
待ち針で止めると、フェルトは厚みがあるため、ずれやすいからです。

たったこれだけですが、型紙切り抜きからはじめて、合計2時間半かかりました。
独身時代なら一気に作れますが、今はカナエの相手をしたり家事をしたりで、何度も中断しています。
「スイカ」の表側。
蛇腹型のブレードは一筆書きのように置いて、星止めで緑のフェルトに止め付けていきます。
「スイカ」が完成したところ、
表:スイカの皮(今見えているところ) 裏:スイカ断面
表:スイカ断面   裏:黄色土台布

という構成になっています。
スイカの皮はスナップで外すことが出来ます。
外すとこのように、スイカをまっぷたつに切ったようになります。
面倒だったのは、スイカのタネの裁断。
型紙はありましたが、その通りに30個近くも印を付けるのも嫌になったので、黒フェルトを必要分だけ等分に切り分け、角を落としてタネの形にしました。
タネはボンドで接着なので、それは簡単でした。

片方の白いタネの位置を間違っています。(反転して作らなくてはならなかった)
一番大変で、時間がかかった「信号機」の土台を裁断したところ。
この他のページは2時間〜2時間半で出来ましたが、「信号機」のページだけは4時間かかりました。

土台布に3つ穴を開け、それぞれ、ボタンホールづくりと同じ要領でかがっておきます。
写真ではわかりにくいですが、穴の上下に合計6つの切り込みが入っていて、これもボタンホールかがりをします。

フェルトは意外と変形しやすいので、つい洋服のボタン穴の要領で力を入れて糸を引き締めていたら、布が少し歪んでしまいました。
信号の、シグナル部分。
黒くて細長い部分と、色つきで丸い部分をつなぎ合わせます。
(付き合わせてかがる)
ちなみに、この裏面は黒のフェルトを裏打ちしています。
黒のフェルトはつなぎ目なしで、「東京湾アクアラインと海ほたる」みたいな形(よくわからない例え・・・・)に、続けて裁断します。
あとで上下にリングを取り付けるので、裏面は型紙よりも細長い部分を長めに裁断しておきます。

間に厚手の接着芯を挟み、表面と合わせます。周囲を巻きかがりでぐるっと縫ってまとめました。説明書には「ボタンホールステッチで」と指定されていましたが、それだと周囲に玉縁が出来てしまう(糸が渡る)のが気になるのと、巻きかがりの方がずっと速く作業できるので、そうしました。  接着芯は黒の方が良かったなあ。
完成。土台布にグレーのフェルトで信号機の形をアップリケ。
上写真で作ったシグナル部分を、穴上下のボタンホールに通します。
細長い部分の上下端には、透明のリングを取り付けます。

このリングを引っ張ると、シグナルが移動して、赤だけ丸窓に出てきたりする仕掛け。
土台布の下に、さらに一枚黒いフェルトを裏打ちしておきます。
これが一番簡単でした。
時計。
土台に文字盤部分と枠部分をかがり付け、
グレーのフェルトをボンドでくっつけます。
針はフェルト2枚で接着芯をはさみ、周囲をぐるりと巻きかがり。
時計の針を動かせます。

テントウムシ。
胴体部分は横線を刺繍(穴糸を使いました)してから、土台布に縫いつけます。
触角部分は黒のヘアゴムのなのですが、折り曲げて、取り付け位置に乗せて、縫いつけます。
羽部分・斑点部分はそれぞれ、2枚のフェルトで接着芯をはさみ、巻きかがりで周囲をまとめます。
完成。羽はスナップで動くようになっており、取り外しも出来ます。
斑点はマジックテープで外せます。

作り方説明書には、目玉部分の白いフェルトは白い糸で止めるように指定されていましたが、あえて黒い糸を使いました。目玉のようになり、表情が出ます。
自動車。
ウサギさんとカエルさんの人形を作ります(綿も入ってます)。
人形の下にはゴムひもを仕込んでおき、土台布に縫いつけます。
タイヤは黒いフェルト2枚で接着芯をはさみ、スナップをつけて作ります。
かんせい。
自動車の形にアップリケをします。
窓の下の部分だけ、土台布には取り付けていません。
ちょうど、ポケットのような状態に仕上がっています。
人形を引っ張ると、ゴムが付いていますので、ぴょこっと出てきます。
タイヤも外せます。
ぱんだ。
耳と目は2枚のフェルトで接着芯をはさみ、スナップやマジックテープを付けます。
パンダのかわいい表情になるようにしたいです。
裏表紙。
卵をアップリケします。黄身には綿を入れました。
ひよこちゃんの顔が可愛くなるように気を付けます。
卵の殻を重ねます。
殻は、2枚のフェルトで接着芯をはさみ、カナエの名前を刺繍しました。
卵の殻の下部分は糸で2カ所とめ(ボタン付けの要領で、殻の下に糸足があって回転可能)、
上の部分はマジックテープで、卵本体に止まるように出来ています。
製本。
作り方説明書では、2枚一組で重ねて周囲をミシンがけしたあと、周囲をぐるりとピンキングばさみで切って始末。左端に鳩目穴を開けて、ひもを通して製本することになっています。

しかし、カナエはひもが大好きで、きっとすぐバラバラにしてしまうこと。
私のピンキングばさみは紙用で、試しにフェルトを切ったら支点が外れてしまったこと。きっとカナエはかじるから、周囲のフェルトがむき出しでは、ボロボロになってしまうだろうこと・・・

というわけで、手持ちの端切れ布で縁取りしました。
カナエはスイカの皮をめくって「ばあ!」といいながら果肉部分を出して喜んでいました。
パンダは目玉部分をグルグル回して遊んでいます。
スナップやマジックテープは、まだ外せないようです。
時計の針や羽をグルグル回しています。
触角はゴムだから伸びるのですが、まだよくわからないらしい。
このぐらい細いものも、つまめるようになってきているので、
伸ばして遊ぶのも時間の問題でしょう。
ウサギさんとカエルさんがお気に入りのようで、「ひょー!」といいながら何度も引っ張って遊んでいました。
信号機は、今のところ無反応です。
もう少し大きくなったら、信号のルールをこれで教えてやろうと思います。
裏表紙。
8ページ4組の周囲をそれぞれしつけ糸で粗く縫ってまとめます。
それから、周囲をそれぞれ縁取りします。
縁取りのみ、ミシン作業となりますが、フェルトは厚くて重ねた上下の布がずれやすく、しかも縁取り布も重なっているので、あちこち小さなシワが出来てしまいました。でも、フェルトは縫い直すほど醜くなるので、そのままです。

細長いフェルト2枚を重ね、それぞれのページの端をかがりつけて、仮の背表紙とします。
最後に、縁取り布をもう少し太く切ったものを用意し、背表紙をくるむようにかぶせてまつり付け、完成です。