ネコの子育て

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中学1年生の冬、ネコをもらった。
当時、父の勤めていた学校の、若手教員が拾った子猫で、
夜は自宅・昼は学校のロッカーに隠し、子猫のことはかわいがっておられたが、
一人暮らしの中で、実際大変だったらしい。

そのネコがうちに来た。
ベージュ色のかわいい雌猫。「チョコ」という名前にした。
チョコはとても可愛らしく、賢かった。
トイレは一発で覚えたし、狩りも上手だった。
私よりずっと大人のように見えた。

春になって、チョコは子供を産んだ。
ネコの妊娠期間は2〜3ヶ月。
2匹産んで、1匹はすぐに死んでしまった。
(私がツワリに苦しむピークの時期に、ネコだったらとうに産まれ、子猫は勝手に歩き出しているわけだ。
ああネコになりたい・・・)

その、雄の子猫には「ピコ」と名付け、一緒に飼った。
チョコは非常にこまめに子育てをしており、
最初のうち用心して、ピコは押し入れから出さなかったのだが、
見ていると、チョコはピコに乳をやるとき、ゴロゴロと喉を鳴らしていた。
これは、乳を吸われるのが気持ちいというより、子供を安心させるためらしかった。
この頃は、ピコのトイレの始末も、毛繕いも全部チョコがやっていた。

2週間くらい経つと、チョコがピコをくわえ、押し入れから出してきた。
部屋の中でピコと遊んだり、食べ物を運んだりするようになった。
食べ物を運ぶのは、母ネコとしての本能らしい。
私たちも子猫用に白身魚や鶏ささみを用意した。
ピコはトイレをなかなか覚えられず、よく失敗した。
チョコはすまなそうな顔をして、片付けていた。

チョコはピコに、狩りを教えようとしていた。
初めは小さな虫。次はセミ。次は鳥!  ・・・と、段階を踏んで、
徐々に大きな獲物を半殺しで連れてきて、とどめを刺す訓練をしていた。
飼い主としては、その片づけが大変だった。

冬に入ろうとするとき、チョコはまた子猫を産んだ。
今度は4匹。
さすがに4匹いっぺんに育てるのは大変だったらしい。
ピコや私たちが覗くのも嫌だったらしく、
初めはピコを産んだときと同じ押し入れにいたが、
ある日、一晩かけて子猫たちを兄の部屋の押し入れに移動させた。
ピコは2週間以上、弟妹たちの存在を知らされなかったことになる。
チョコは乳腺炎を起こしてしまい、母乳をあげられなくなってしまった。
兄がスポイトに粉ミルクを溶かし、子猫たちに与えていた。

1ヶ月くらい経つと、子猫は押し入れから出歩くようになった。
ピコは初めて弟妹たちを見て、かなりビックリしているようだったが、
階段から落ちそうになっている子猫を止めたりしていた。
やがて、ピコは子猫を引率して、1時間ほど外出するようになった。
チョコにとっては、つかの間の休み時間である。
ネコもため息をつくのを始めて知った。
肩を揉んでやるとゴロゴロと喉を鳴らし、かなりお疲れの様子だった。

4匹の子猫のうち、2匹は友人のところへ里子に出した。
チョコは賢いネコだが、1匹いなくなっただけでは気付かなかった。
2匹いなくなったら気づき、近所中を探し回っていた。