ゆかた

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私は着物が好きです。学校では今学期、ゆかたの縫い方を教えることになっています。
そのウォーミングアップを兼ねて。これで、ゆかたを縫うのは10枚目ぐらいか?(人にあげたりもしてるけど・・・)

ゆかたの反物は、幅36センチくらい、長さ12メートルくらいの長い反物です。これをうまく切り分けて一枚のゆかたに仕立てるわけで、大変合理的だと思います。洋裁のように余り布も出ないし、昔の日本人は無駄のない生活をしていたと思います。このように、身長などに合わせて布をたたみ、一気に裁断します。また、日本的な感覚として、模様が左右対称に並ばないように配慮します。特に背縫いの位置で、同じ模様が並ばないようによく見ておきます。


袖を縫っているところ。このように、たもとの丸い部分は厚紙を入れ、ギャザーを寄せておきます。そのあと、袖口を三つ折りぐけします。





背縫いをしたあと、肩に「肩あて布」、お尻の部分に「居敷あて布」を縫いつけます。補強のためです。この白い布は「サラシ布」、布おむつと同じ素材です。そのあと、脇縫いをして、裾を上げます。




襟付けをします。授業では、共襟を衿に縫いつけてから、まとめて襟付けをしています。この方法については賛否両論あります。共襟は、本来「かけ衿」と言い、着物が縫いあがった上から改めて付けるものでした。かけ衿だけはずして洗濯したり、布が傷んだら、かけ衿だけ付け替えたりしていました。江戸時代には黒いかけ衿が流行しています。
ですが、縫製に一手間増えることになるのも事実です。また、現代では、ゆかたは丸洗いしますし、かけ衿が傷むほどゆかたを着ることもないでしょう。それで、共襟を先に縫いつける方法を採ることにしました。結果としては、襟付け線がすっきりして見えると思います。襟付け線の上に、ピッタリ重ねて共襟を縫いつけるのは、なかなか難しいものですから。
縫い代の厚さを均一にするためにサラシ布を入れ(三衿芯という)、裏側をくけます。

袖付けをし、最後に補強として、身八つ口や袖付け止まりの位置に、かんぬき止めをします。



ところで、帰省した際に、祖母の縫ったゆかたを譲ってもらいました。祖母は新潟で、呉服店を営んでいました。経営者ですので、商品を仕立てているわけではなく、趣味でゆかたを縫っていたのです。衿を見てびっくり。首の後に回る分は、折り込んでくけてあるのですが、衿の下の方は開いたままの仕立てなのです。裏側にサラシ布を当ててあります。私が学校で習ったり、市販されているのを見た限り、現在のゆかたは衿の一番下まで折り込んで、裏をくけて仕立てています。普通の着物なら、このように衿を開いたまま、別布を当てて仕立てるのは当たり前ですが・・・
祖母はとうに亡くなっているので、どういう意図でこのような仕立てにしたのかは、謎です。大正時代の女学校は、こういう仕立て方が当たり前だったのかしら?

ゆかたは、必ず一人で着られるようになります。
ゆかたが着られれば、普通の着物も着られるようになる、はず。
そりゃあ日常生活には着物がないのですから、練習と慣れは必要ですけど・・・・

「しきたり」とか「格」とかうるさそうで、つい退いてしまうけど、
どうせ洋服だってTPOを間違えて恥をかくことぐらいあるわけで。
昔の人は毎日着ていたのだから、難しく考えて、わざわざ着物を遠い存在にするのは、
あまりにもったいない。

だから、せっかく縫ったらどんどん着ましょう。
着物は、洋服ほど活動向けには出来てませんから、それなりに動きに制限はありますけど、
それもまた着物の楽しみ。