分娩室へ

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分娩室へは、夫だけが付いてきて、母は待合室で待っていることになった。
主治医に診察してもらうと、子宮口はほぼ全開になっていた。
助産士も、「これなら自然分娩で行けるでしょう」と言っていた。
すぐに「いきんでいい」ということになった。

分娩台はやたら大きい。
足を置く台は遠くて、ギリギリ乗るぐらい。踏ん張る力が入らない。
手で握って踏ん張るためのハンドルが付いているのだが、届かない。
それで、横向きに寝て、分娩台横の柵を握って踏ん張ることにした。

ずっと、いきまないようにしてきたせいか、
「いきんで良い」と言われても、どうして良いかわからない。
息を吸って、止めて、肛門の方にその力を向けるように(便秘の便を出すように)と言われた。
でも、上手くいかない。
顔に力が入ってしまったり(歯を食いしばっても無駄なのに)
うおお、と声ばかり出てしまったり(声を出すだけ、力が無駄に逃げていく)・・・

しばらくすると、いきむのに慣れてきた。
これまでは、いきまないようにしてきたので、陣痛が来ても、腰のあたりで何かをストップしなくてはならなかったが、
今は下半身までグッと力を入れることができる。

安産な人なら、こうして数回いきむと産まれてくるものらしいが、
私は、ぜんぜん産まれない。
子宮口は開いているのだが、子供が下りてこないそうだ。

そこで、椅子に座っていきみ、重力の力を借りて、子供が下りてくるか試すことにした。
これはいきみやすかった。
全ての力が下に向くという感じで、あまり苦しくないし、叫ぶこともない。
しかし、30分ほどやってみたが、効果はあまりなかった。

陣痛が起きたときにお腹を押してもらい、同時に思い切りいきみ、
子供が下りてきたら吸引するか、鉗子で引っ張り出す・・・作戦を試してみた。
下りてこない。
それどころか、お腹を押したら、子供の心拍数が下がってしまった。
これは、子供にストレスがかかってヤバイ状態。
数回でやめた。

分娩室に入って2時間半が経った。
子供の頭は見えているそうだ。
私もだんだん疲れてきた。
酸素吸入マスクが付いた。特に息がラクになった感じはしないが。

人工破水してみた。
破水すると、その水に乗って子供がツルンと出てくることがある。
・・・ぜんぜん出ない。

どうも、子供が引っかかっているみたいだ。
骨盤の一番細いところを通過できていない。
ということは、レントゲンで見たとおり、頭が骨盤の一部に引っかかっているということだ。
朝までやっても出ないだろう。
これ以上時間をかけるのは、母子ともに危険な状態に陥る。
特に、子供が酸素不足になって、脳に障害を負うことになってしまうのが怖い。

主治医もスタッフも、私も、「子宮口全開してるのに、頭も見えてるのに、ここまで来て手術・・・?」
と迷っていたが、とにかく分娩室に入ってからは、時間がかかるほど危険らしい。
副主治医が呼ばれ、再度診察してもらい、セカンド・オピニオンを取った。
やはり、手術しないと危険だろう。
私も、子供の命と安全が最優先だと理解していた。

日付が変わり、午前12時半を回っていた。
陣痛開始から19時間が経っていた。
スタッフが集められ、手術室に向かうことになった。

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