洗い上がった洗濯物に、透明なツブツブゼリーがたくさん付いていました。
これは! おむつの中の「高分子吸収体」ではありませんか!!
洗濯機の中を探ると、娘が夜だけはいている紙パンツが出てきました。
娘は1歳代の終わり頃から、自分の脱いだ服は洗面所(洗濯機がある)へ、
使用済みのおむつはトイレのゴミ箱へ、間違いなく自分で「ポイ」しに行っていました。
今朝も、私が息子の世話をしている間に、娘はすっかり身支度し(もちろんおむつも処理し)ていたのです。
それは母として、とってもありがたいことなのですが、
でも娘もうっかり、やってしまったのね・・・・
「紙おむつ 洗濯」でグーグル検索してみたところ、
すると、「塩を入れて洗濯し直せばよい! 吸収体が溶けるよ!」というのが出てきました。
メーカーのサイトでは、
「吸収体は無害ですが、手で取り除けるだけ取り除き、洗濯槽もよく拭き取り、再度洗濯し直す。
乾いてもくっついている吸収体は、はたき落としたり粘着テープで取り除き、再度洗濯し直す・・・」
というやり方が書いてありました。
各社とも、「塩を使え」とは書いてません。
私は洗濯機が回っている間、2回「一時停止」して、
くずとりネットの中をきれいにしました。
2回とも、かなりの量の吸収体が入っていました。
溶けた様子はない・・・・
しかし、服が乾くと、かなり「ツブツブゼリー」が残っており、はたいても粘着テープを使っても取れません。
結局、服を裏返しながら、さらに2回洗濯し直し、どうにか終わりました。
さて、「塩を入れて洗濯し直せばよい」という情報の真偽はどうなのでしょう。
実験してみるのが一番です。
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新しい紙おむつを切り開いてみます。 中は、綿で満たされているように見えますが、 これが実は高分子吸収体です。 |
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少しとって、鍋に入れてみます。 ちなみにこの量で、はかりに乗せても関知しないぐらい軽いのです。 中心に綿の固まりのようなものが、 周囲に細かな(塩一粒より小さいくらい)ツブツブが見えますが、 全部高分子吸収体です。 |
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50mlほどの水をかけてみました。 10秒後、みるみる水を吸い取ります。 |
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30秒後。 ツブツブゼリー状なのがはっきりしました。 |
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5分後。 いやあ、カサが増しましたねえ・・・ つまり、洗濯機の中でほんのちょっぴり、 高分子吸収体が漏れてしまっただけでも、 被害は甚大ってことです。 |
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ほんのひとつまみだけ取ってみました。 |
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5mlだけ水をかけてみます。 さすがに吸収し切れていません。 |
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キッチンペーパーを端に寄せて、水分を吸い取ったあと、 乾燥させてみました。 もとの「綿っぽい状態」に戻りました。 高分子吸収体まみれになった洗濯物を洗濯し直し、 乾かすと、まだけっこうツブツブゼリーが残ってます。 同時に、綿ぼこりのようなものも、だいぶくっついています。 「綿ぼこり」はおむつ外側部分の切れ端なのかもしれませんが、 乾燥した高分子吸収体であることも否定できないですね。 |
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さて、ここから核心の実験です。 「高分子吸収体は、塩に溶けるんですか?」 ひとつまみの高分子吸収体(右側)と、ひとつまみの塩(左側)を 用意しました。 どちらも少量なので、はかりが関知しません。 だから見た目で「だいたい同量っぽいカサ」にしました。 |
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両方を合わせてみました。 すぐ、水がしみ出てきます。 でもこれが、高分子吸収体が溶けたのかどうかわかりません。 塩自体も水分を吸収するものですし、 水分を吸収してから塩が溶けて、このように見えるのかもしれないからです。 そこで、キッチンペーパーで水分を吸い取り、残ったものを観察しました。 溶けきれない塩のようにも見えるし、 縮んだ吸収体のようにも見えるし。 よくわかりません。 |
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では・・・ 先ほどの、水を50ml含んだ、高分子吸収体の上に、 小さじ2杯ほどの塩を乗せて、混ぜてみました。 |
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10秒後。 水がどんどん出てきます。 |
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30秒後。 大根おろしみたい・・・・ 水分が出てきているようですね。 |
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鍋を傾けて水を捨て、 さらに手で、軽く絞ってみました。 随分カサが減りましたね。 でも、高分子吸収体が溶けたわけではありません。 |
実験結果まとめ。
高分子吸収体は、塩で溶けるわけではありません。
ただし、含んだ水分が抜けて、随分カサが減ります。
考察。
ネット上で「紙おむつ 洗濯」と検索すると、
「やっちゃった〜!」という人がたくさん出てきます。
ホント、育児って疲れるので、うっかりやってしまうことがあるんですね・・・
そして、「塩水で洗濯し直すと解決する」情報の根拠としては、
「高分子吸収体は、塩で溶ける性質があるから」もしくは
「浸透圧の関係で、塩に出会うと水分が出ていくから」
と書かれているものが見られました。
でも、それはちょっと違います。
実験結果にあるように、塩に出会っても高分子吸収体が溶けることはありませんでした。
だって、尿や汗にも塩分は含まれるのですから。
水分が出ていくのは浸透圧の関係ではなく、
高分子吸収体はもともと、ナトリウムやカリウムに出合うと、吸収力を落としてしまう性質があるため、
吸収しきれない水分が出てきてしまったものと思われます。
ナメクジみたいに溶けるイメージではなく、
キュウリの浅漬けみたいにシナシナになるイメージでもなく・・・
ただとにかく、高分子吸収体のカサが減るのは確かでした。
結論。
(1)紙おむつを洗濯機にかけてしまったら、衣類にくっついてしまった高分子吸収体を、取れるだけまず手で取ります。
(2)そして、洗濯し直します。
(3)その際、数回の一時停止をし、洗濯機の中にある「くず取りネット」にたまった高分子吸収体を捨てます。
(4)これを繰り返す(衣服も裏返したりして)と、だんだん高分子吸収体が取れてきます。
(5)塩で高分子吸収体が溶けることはありません。でも、カサが減りますので、
くず取りネットの中にたまる高分子吸収体の量が減る、という利点はあると思います。
何しろ、高分子吸収体は、ちょっぴりでもすごくふくらみますから、くず取りネットからあふれてしまうかもしれませんし。
(6)でも、洗濯機によっては塩で洗濯槽が傷むことも考えられるので、よく気を付けましょう。
そして・・・
洗濯機を回す前に、その中身やポケットの中を今一度チェックしましょう。
育児でドロドロに疲れた親御さん、身の回りのことができるようになった(ように見える)子ども・・・
ドンマイです。