ミシンの修理

縫製室目次

2015年1月

yousight

私が10歳を迎えるとき、おもちゃのミシンをねだったら、
リッカーの職業用電動ミシンをもらいました。

まだ子供だったので「コレジャナイ・・・」と思いましたが、
このミシンで、実にいろいろなものを縫いました。
ジグザグとかがり縫いができて、ボタンホールも作れる。
垂直全回転釜なので、今どきの水平釜と違って力もスピードもあり、縫い目がきれい。
薄手のレースも厚手のデニムも皮革もどんどん縫えました。

それでいてアタッチメント類は家庭用でOKなので、安く買える。
大変良いミシンだと思います。
重量もあって、高速回転でも安定してる。(今のミシンは軽すぎ)

大学で服を学び、今いちおうそれで食えているので、
このミシンに進路を決めてもらったようなものです。
ここしばらく、ちょっとミシンの動きが重いかなと思ってました。
1月末に、一気に縫おうと思っていたものがあるのですが、
ミシンの下糸が動かない。
針が釜に当たる。

これは・・・釜の回転タイミングがおかしいのか、
ゴミが中にたまっているのか???

ともかく分解して、中のゴミをとりました。

ミシンって(私のころは中学技術の教科書にも構造図が載っていたものですが)
こんな風に、クランクが上下するような動きなんですよね。
ミシンの側面のカバーを開け、下糸の入っている釜の部分を調べました。
釜の中に下糸を入れ、この写真の左側に入れます。
写真左側の、白いフレンチクルーラーみたいな形をしているのが
「釜ギア」という部品で、
釜ギアが回転することで、クランクの動きを下糸の入っている釜に伝え、
ミシンで縫えるようになるのです。

しかしこのフレンチクルーラーじゃなくて釜ギア、
八時の方向に亀裂が入っています。
あまりにきれいに入っているので、模様かと思いました。
亀裂なんですね。
このせいで釜ギアの円周サイズが変わってしまい、動きを正しく伝えられなくなってしまったというわけ。

最近のちゃちなミシンは、部品も多くがプラスチック製ですぐ壊れたりします。
このミシンは、ほとんど金属製なんですが、なぜか釜ギアだけプラスチック製。
ネットで調べると、リッカーミシンはこの「釜ギア割れ」がとても多いようです。
プラスチックはどうしても、経年劣化で割れてしまうんです。
修理に出したいと思いましたが、リッカーは20年以上前に倒産しています。
インターネットで、リッカーミシンの修理実績のある会社・部品を持っている会社を調べました。

甲府の会社が見つかりました。
電話やメールで連絡を取りました。
このミシン自体は良い機種で、まだ10年以上使えるとのこと。

修理費用は1万円ちょっと。まあ部品交換を考えると、現実的な価格だと思います。

もし買い換えるなら・・・  垂直釜がいいので、ヌーベルクチュールかシュプールあたりで
7〜8万円くらいだったかなあ。

宅配便で運びます。140サイズの箱に、古毛布などを敷き詰めてクッションにします。
細かい部品はプチプチでしっかりくるみ、隙間に新聞紙を詰め、
全体をプチプチでミイラみたいに包みます。
プチプチはホームセンターにて、5メートルで500円くらい。
コントローラーも一緒に梱包。
ミシンの周囲と上に、ぎっしり詰め物をしなくてはなりません。
これがなかなか大変。
あまりにミシンとぴったりサイズの箱だと、ミシンの部品に直接衝撃が当たり、
最悪、輸送中に壊れてしまいます。
箱を揺らしても、ミシンが動かないくらいまで詰め物をします。
古タオルなどを入れていましたが、ミシンの上部はあまり重いものを入れるのも
心配なので、この後は古新聞をくしゃくしゃにして詰めました。
ガムテープで留めて、佐川急便さんに連れて行ってもらいました。
あとは修理待ち。

・・・と、これを書いた2時間後(ミシン発送から27時間後)
修理業者さんから電話をいただきました。
もう、修理が終わったそうです。

いろいろと問題があり、どうして今までちゃんと動いていたんだ!?
とミシン屋さんもびっくりだったそうです。

(1)下糸を巻く装置が動かなくて、下糸巻きの軸がゆがんでいた
   (実は、私が大学生の時にはすでに下糸巻きが動かなくなっていて、
    スーツもドレスもすべて! 手で下糸を巻いていたのでした!!)

(2)ランプがつかなくなっていて、コードがぶらぶら状態
   (ランプは30年間、全くいじっても電球交換もしてませんでした。
    仕事で使ってるミシンは数年ごとにランプが切れるので、
    うちのミシンはなんでこんなに電球が持つんだろうと思ってた)

(3)上糸をかける部品が1本、折れてなくなっている
   (これは、大学を卒業して親元を離れた時、引っ越しで破損したと思われます。
    本当はプチプチでぎっしりミイラ状態にすることを知らず、
    ただミシンを段ボールに入れて運搬したため、当然ですね…)

   部品がない状態では、糸調子が整わなかったのでは?
   とミシン屋さんに聞かれましたが、
   糸調子は自分で調整して、どうにかそろえていたので、まあ縫えていたんですよ・・・・   (驚かれてしまった)

問題の釜ギアは交換してくれて、(1)〜(3)も治りました。
しかし、今回、最大の驚き!!
「このミシンに適合する針は、家庭用タイプです」

えーーーーー
ずーっと職業用を使ってました!!
だってボビンは職業用だし、職業用ミシンとして買ってもらったものだし!
でも押さえ金は家庭用タイプが使えてた…

ミシンの取扱説明書なんて、小学校卒業前になくしてました。
いやあ、ミシンって、完璧な状態じゃなくても案外、動いてしまうんですね…
じゃなくって。

家庭用ミシンに職業用ミシンの針を入れようとすると、
明らかにうまく入らないので、すぐにわかるんですが・・・
私のミシンもそうなるはずだったのに、
特に問題なく(問題だらけだろう?)30年使えてた。

倒産したリッカーのだから、直せるお店はないだろう、一応縫えてるし…
と思い込んで、
(1)や(3)の不具合は何年もあったのに
ずーっとちゃんとしたメンテナンスをしてなかったのがいけない。
いや、家庭科教師として恥ずかしすぎる結果でした。

修理費用は送料込み2万円弱。オーケーです。